週の初めは比較的お客さんも少なくて静かだ。
今夜も耳の遠くなったご隠居が一つ席空けてカウンター手前に陣取っていただけ。
そのご隠居も瓶ビールを独酌しながら入院していた話をして先に帰ってしまった。
もう私の手元の銚子もほとんど空だったのだが、他にお客さんもいなかったので
壁掛けの小さなテレビを点けてもらうことにした。
9時30分からNHK教育で放映される"俳句王国"。
京都で大学に通っていた頃の二つ年下の友人から出演するという連絡を貰っていたのを
不意に思い出したのだ。
私もついぞ俳句には親しんだこともなく、当然初めて観る番組だった。
店のご主人とおかみさんも、似たようなものだろう。
その日のテーマ”夫婦”を出演者が一人ずつ読んでお互いに批評する。
批評している段階では誰が書いた句なのか伏せられている点が面白い。
彼女の句は、こうだ。
”林檎むく
あなたの前世
きりんきりん”
健全な愛情に加えて、実に伸びやかな野趣のある詩だと思った。
店のご主人とおかみさんも感心されていた。
司会者に解説を求められたときの返しも素晴らしかった。
決して素っ気ない感じではなかったが、要は「言葉の通りです」
という趣旨で上手い具合に煙に巻いてしまった。
やはり店のご主人とおかみさんは感心しておられた。
詩は日常に彩りを与えてくれのかもしれないが
句は日常がもはや彩られる必要のないことを教えてくれる。
何をどう語ろうとも、ただ無粋である。
帰り道。コートで寒さを凌ぐにはまだ早い。
無為に酒を呑んでいるのは、無為故、句に詠んでも仕方がない。
こうしてブログに、そのまま綴っておくのがちょうどいい。
いいですね、男独りの酒タイム。
返信削除情緒あり、考察あり、ツマミありで
静かに更けていく、最高ですなw
ここは本当にいい店ですよ。
返信削除今度ぜひ三軒茶屋に遊びに来てください。
ご一緒しましょう!
味わいのある日常を送られていますね。
返信削除気のもちようだよ。
返信削除彩られた日常に目覚めるべし。