2011年11月16日水曜日

嫌われたくない好きになってほしい

飲み屋の小さなテレビ。ふと目をやると、なんたら鑑定団という番組で上村松園の作が
品定めされていた。松園といっても、美人画ではない。
大和武の尊があっさりと描かれた掛け物で、真作として200万の値がついた。
たかが200万であれば、よほど生活に困っていない限り売ることもあるまい。
松園の美人画が掛かっていると何となく寛げない気もしてくるが
大和武は実に飄々として肩の張らない風情であった。
ああいうのなら、一枚欲しいものだ。
何てよしなしごとを思い浮かべながら家路を行けば
飲み屋の帰り道というのは成る程、本来こういうものではないかという気がしてくる。

APECの首脳会議が閉幕された。
TPPへの参加に向けた協議が始まったということで連日メディアを騒がしていた。
基本的にマスコミは諸外国の反応に何よりも関心が高いらしく、
アメリカの通商代表やら各国の代表が歓迎の意を表明したとかしないとか、
そういうことを懸命に伝えようとしていた。
どこぞの報道番組では、政府関係者がオバマ大統領に
手作りのクッキーを渡したというエピソードを紹介していた。
"参加交渉に向けた協議"という、そもそも何を目指した協議なのかもよく分からないが
恐らくは協議の相手に気に入られることが最も大切なポイントという
その認識は政府関係者とマスコミが共有しているようだった。

まず相手に好かれようとするのは、東アジア的なものか後進国的なものなのか、
いずれかの性質に由来していると、私は最近まで考えてきた。
しかし最近になって、それは主要国の中では日本人に独特な性質なのではないかと認識を改めた。
(ひょっとするとブータン辺りはそうなのかもしれないが、
ブータンに知り合いがいないので分からない)

私が米国に住んでいたことを話すと、日本人の女の子が外国でモテるのは本当か、
と頻繁に聞かれる。
それは本当だと思う。
一つの理由はお金持ちであること、もう一つは愛想がとてもよいことだ。
韓国や台湾、中国の女性の中にもとても魅力的な人はいるが、意味もなく笑ったり異性に媚を売ったりしない。
日本人の女性が相手に気に入られる努力をするということはそのことが重要なアドバンテージを持つ社会で育ったからだろう。愛想がいいというのは、人間関係をハーモナイズする作用があったりするので悪いことではないと思う。
例えば、私もコンビニやファストフードのお店に行ったときに店員の愛想がいいと気分がいいだろう。反対にシリアスな仕事をしたりする上では、相手に好かれようとする態度が透けて見える人間は信用することが出来ない。

多国間FTAのルールを策定する場において、交渉相手に好かれることが
どのようなアドバンテージを持つのか分からない。
各国とも国益を最大化させるのがゴールであり、相手が好きだろうが嫌いだろうが
その為にはあらゆる手段を尽くすはずだ。
真剣な交渉の上では、相手が自分をどう見ているかを意識する余裕はないはずだし
その事をどう利用して国益に結び付けるつもりだったのか、全く不明である。

0 件のコメント:

コメントを投稿