2011年10月30日日曜日

これからどうすんの

ユーロ経済圏が歪みを露呈する一方で、BRICSはデフォルトが懸念される南欧諸国の債権引き受けを申し出るなど、ジワジワと影響力を高めてきている。また次期大統領再任が確実視されているプーチン氏も、ロシアを中心としたCISの経済統合に意欲を見せる。向こう数十年の世界経済の趨勢がブロック化であることに疑いはない。その中で、日本はどういうポジションを目指しているのだろう。

ご存知の通り、現時点でTPPに参加を表明している国家はオーストラリアとニュージーランド、チリとアメリカに加えてASEAN諸国のシンガポール、ブルネイ、マレーシアとベトナム。この4カ国の共通点は2つある。まずはベトナムをのぞいた3カ国はASEAN10カ国で経済的に恵まれたトップ3だ。国民一人あたりのGDPは元より、都市化の割合で他のASEAN諸国を大きく引き離している。もう一つは、いづれの国も中国との間に少なからぬ緊張を抱えている点だ。近年では南沙諸島の領有問題が取り沙汰された。経済的にこれ以上中国に依存するわけにはいかない。

国内のマスメディアで交わされている議論は、TPPに参加して製造業を守るだの拒否して農業守るだのと、極めて近視眼的な範囲に限られている。外交問題として語られるべきが、あたかも日本だけで取り扱う問題のように語られている。諸外国とどういう関係を築きたいのか、国際社会の中でどういったポジションを得たいのか、政府は明らかにしない。「こういう方向を目指しましょう」というビジョンがなければあらゆる判断は場当たり的なものにしかなり得ない。 だが、政治家からも、またその声を伝える立場にあるメディアの側からも、そういったビジョンは一向に示されない。

アメリカ主導のTPPが気に入らないと言うが、ではASEAN+3のような中国が主導権を持つ枠組みへの参加には賛成なのか(実際のところTPP反対派議員の多くは親中国だ)。韓国のように個別のFTA網を築くには莫大な手間と時間がかかる。これ程外交を軽視している日本がそれを完遂する意思と能力を持ち合わせているとは到底思えない。

私個人としては、現時点ではTPPへの参加は賛成でも反対でもない。だが交渉に参加することは非常に重要だと思う。今の段階で外交のビジョンが示されていないのは非常に遺憾だが、情報を得るば新しい判断材料が増えるかもしれない。

ところで、国会議員の中には「一度交渉へ参加すると断れない」「なし崩しにTPPへ加わることになる」と真顔で語る者がいる。これが驚くべきことに与党の議員だったりする訳だが、”我々の政権には他国との交渉能力が一切ありません”と喧伝しているのと同義だ。とても恥ずかしいことだと思う。しかし、そういう当たり前のことに気づいていない無知が何より恥ずかしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿